「こどもの食卓」
の仲間たち

#01 「食べる」を心配しないで良い。という幸せ

#01 「食べる」を心配しないで良い。という幸せ

ほかほか弁当葉山一色店 × hoka-hokaナインティーン芦川三鬼さん

「こどもの食卓」は、たくさんの人にサポートしていただいています。 そんな方々をご紹介するこのコーナー、第1回目にご登場いただくのは、毎回、“白ご飯”の炊飯をしてくださっている「ほかほか弁当葉山一色店」のオーナー芦川三鬼(みき)さんです。

葉山町の独立系ほか弁

国道134号線が葉山町中心部で大きくカーブするあたりにある「お弁当屋さん」。風景の一部として「ほかほか弁当葉山一色店」を認識している葉山町民は多いはず。さて、その風景を知る人の中で、どれくらいの人が、この店の弁当を利用したことがあるだろうか? 店はいわゆる1980年代から隆盛を極めたフランチャイズ弁当屋っぽい構え。目につくメニューは「のり弁」「唐揚げ弁当」「幕の内弁当」…新規性は特にない? 「ほか弁? 昔はお世話になったけど、いまは…」という人も多いかもしれない。でも試しに、昔を思い出すつもりで、「のり弁」をオーダーしてみてほしい。価格は財布に優しい450円(2019年4月現在税込)、牛丼屋ほど早くは出てこない。少し待って、出来立てのお弁当をいただくと…あれ、ほか弁ってこんなに美味しかった? という軽い衝撃に打たれる。そう、この店のお弁当は、のり弁に限らず、注文を聞いてから揚げたり、焼いたり、詰めたり。ウォーマーの下で放置された揚げ竹輪が載るような事はなく、そしてご飯の美味しさを指摘する常連さんが多いのだ。

振り返って、手描き文字のメニューを見ると「のりから手メン」「のりミルシャケ」など暗号に近いネーミングののり弁派生系多数、「デブカレー」と名付けられた“太らないけど食後にやる気を失う”カレー、土日祝限定の「エコランチ」などなど、独立系弁当屋であることがわかるメニューが並んでいる。「できる限り冷凍物は少なく、可能な限り地場の食材を」という考えなのだそう。メニューの中には「相談弁当」の文字も。

調理中

「早めに言ってくれれば、色々アレンジできるのよ。アレルギーとかもね。好き嫌いのご用にはそれなりにお金はいただきますけど、高いこと言わないし(笑)。中学校に持たせるお弁当をチームアップして注文するお母さんもいるのよ」と三鬼さん。

中学校のお弁当とは、葉山町立南郷中学校には、学校内にお弁当を注文できるシステムがあり、「ほかほか弁当一色店」は南郷中にそのお弁当を供給する業者でもあるのだが、「そのシステムがない他の中学校に通う子どもをもつお母さん達」の場合、ひとりのお母さんが空のお弁当箱を「ほかほか一色店」に届け、同店がお弁当箱に詰め、ひとりのお母さんが複数の弁当を店でピックアップして学校の下駄箱に届けるという連携プレイをしているのだそうだ。

「だってお弁当づくり大変だもの。仕事があったり、年の違う子どもがいたり、お母さん達忙しいんだから、上手に使ってくれたらいいと思うの」。

手書きのメニューも味わいたっぷり

「ご飯どうしよ…」な時、上手に使って!!

三鬼さん自身も、仕事を続けながら2人の男の子を育てあげた働く母親。大学生、高校生と手がかからない年頃になったが、お母さんたちの辛さがよくわかる。

そんな三鬼さんが、2018年、従業員の休憩スペースだった場所を改装して、つくった店内飲食スペースが「hoka-hoka ナインティーン」だ。お弁当屋さんが18時半のラストオーダーで終わった後に、隣の「hoka-hoka ナインティーン」が19時から営業を始める。ここは弁当とは別メニューの食事が提供され、お酒も飲める。もちろん、定食スタイルで食事を取ることも可能だ。

「帰りが遅くなってしまう時に、子どもだけで来て、ここで食べていてもいい。私か母が必ずいるから安心していいのよ。ここで待ち合わせしたっていいんじゃない? 早くご飯食べさせなくちゃと焦ったり、“ごめんごめん”って謝り倒して暮らすことないのよ。それでお母さんたちに余裕ができるなら嬉しい」。

三鬼さんは、父の転勤で5年間、札幌で暮らした以外、葉山から離れたことはないそう。「マジックで眉毛を描かれた犬が校内をウロウロしていた」という葉山中学校時代はじめ、子ども時代をともに謳歌した同級生達とは、40過ぎてもガチで喧嘩ができる良い友達。ちなみに「三鬼」さんとは、「この字の方が合う」と友人が授けてくれた当て字で、本名は三紀(みき)さんである。

「ここ(葉山)は狭いけれど、新しい人が来て良い風入れてくれていると思うの。“こどもの食卓”もそうね。最初に話を聞いたとき、なんて大変なことする人がいるんだろう、って思ったけれど、子ども達がワチャワチャ沢山集まってご飯を食べてる、あのライブ感というか盛り上がりを実際に見て、ほんとに凄いなと思った。こういう事が起きる町って、いいよね」。

三鬼さん、今後は多世代交流や、障がいのある子たちが関われるなにかを、考えたいと思っているそう。そんな、強面だけど優しいお弁当屋さんがいる葉山もいい町だ。

「hoka-hoka ナインティーン」店内の張り紙。中高生の味方か

from 食卓メンバー

「こどもの食卓」では、毎回50人の子ども達に食事を提供します。 主婦中心のボランティアグループにとっては、想像を絶する量なのです。 ご厚意で集まった素材から、開催の朝にメニューを最終決定、その時々のメンバーが集まって、おかずの下こしらえ開始、さぁ、ご飯も炊かなくちゃ…みんなに家庭用炊飯器を持ってきてもらって、5~6個の炊飯器のスイッチを次々とオン。 主菜や副菜もできて、よし盛り付け! という時に「あら?!」…この炊飯器、スイッチ入ってませんた…(汗)、なんて失敗もありました。
いまは三鬼さんが、白ご飯を大きな保温ケースに入れて会場まで届けてくださるので、大切な主食がきちんと提供できる。 そんな支援は私たちにとって大きな心の寄り所です。

プロフィール

芦川三鬼(あしかわみき)さん葉山町一色で40年続く「ほかほか弁当葉山一色店」店主。 初代店主の下でパート従業員だった母が経営を譲渡され二代目店主となり、その母を手伝うなかでさらに経営を引き継いだ三代目。 現在も働き手でもある母とともに店を切り盛りし、近隣に住む人・働く人の空腹に手を差し伸べ続ける生粋の葉山っ子。 夫と二児の4人暮らし。

ほかほか弁当葉山一色店 × hoka-hokaナインティーン
葉山町一色1392-80
TEL:046-875-8891

ほかほか弁当:年中無休
*月木金 9:00-13:50(LO)
17:00-18:30(LO)
*火水  9:00-13:50(LO)
*土日祝 9:00-18:30(LO)

hoka-hokaナインティーン:火水定休
*その他 19:00-23:00(LO)

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